主文
1 原告の請求をいずれも棄却する。2 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第1 請求
1 被告が平成16年2月26日付けで原告の平成13年分及び平成14年分の所得税についてした各更正処分(ただし,いずれも裁決により一部取り消された後のもの)のうち,別紙1「確定申告」欄記載の各納付すべき税額を超える部分及び各過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも裁決により一部取り消された後のもの)の全部を取り消す。2 被告が平成16年2月26日付けで原告の平成13年1月1日から同年12月31日まで及び平成14年1月1日から同年12月31日までの各課税期間の消費税及び地方消費税の各更正処分(ただし,いずれも裁決により一部取り消された後のもの)のうち,別紙2「確定申告」欄記載の各納付すべき消費税額及び地方消費税額を超える部分並びに各過少申告加算税賦課決定処分(ただし,いずれも裁決により一部取り消された後のもの)の全部を取り消す。
第2 事案の概要
本件は,法律事務所を経営する弁護士である原告が,所得税について各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受け,かつ,消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の各更正処分並びに過少申告加算税の各賦課決定処分を受けたことから,これらの各更正処分の一部取消しと過少申告加算税の各賦課決定処分の全部取消しを求めている事案である。1 前提事実(顕著な事実及び当事者間に争いのない事実)
(1) 原告は,平成4年4月,神奈川県相模原市内で法律事務所を開設した弁護士である。
(2)ア原告は,平成13年分及び平成14年分の所得税について,青色の確定申告書に別紙3「課税処分の経緯(所得税)」の「平成13年分」及び「平成14年分」の各「確定申告」欄のとおり記載して,いずれも法定申告期限までに申告した。
イ処分行政庁は,これに対し,平成16年2月26日付けで上記アの各年分の所得税について,別紙3「課税処分の経緯(所得税)」のとおりの各更正処分及び各過少申告加算税賦課決定処分をした。
ウ原告は,上記イの各処分を不服として,平成16年4月1日,審査請求をした。
(3)ア原告は,平成13年1月1日から同年12月31日まで及び平成14年1月1日から同年12月31日までの各課税期間の消費税等について,確定申告書に別紙4「課税処分の経緯(消費税)」「平成13年分」及び「平成14年分」の各「確定申告」欄のとおり記載して,いずれも法定申告期限までに申告した。
イ処分行政庁は,これに対し,平成16年2月26日付けで上記アの各課税期間の消費税等について,別紙4「課税処分の経緯(消費税)」のとおりの各更正処分及び各過少申告加算税賦課決定処分をした。
ウ原告は,上記イの処分を不服として,平成16年4月1日,異議申立てをしたところ,異議審理庁が,これを国税通則法89条1項の規定により審査請求として扱うことが適当であると認め,その旨異議申立人である原告に通知し,原告がこれに同意したため,同年6月14日付けで裁決庁に審査請求がされたものとみなされた。
(4) 前記(2)ウ及び(3)ウの各審査請求について,平成17年3月14日付けで,別紙3「課税処分の経緯(所得税)」及び別紙4「課税処分の根拠(消費税)」の各「審査裁決」欄のとおり,裁決がされた。これによれば,平成13年分及び平成14年分の所得税についてした各更正処分及び各過少申告加算税賦課決定処分並びに平成13年1月1日から同年12月31日まで及び平成14年1月1日から同年12月31日までの各課税期間の消費税等の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分は,一部取り消された。
(5) 原告は,平成17年9月9日,上記(4)の裁決のうち,原処分を維持した部分について,本件の取消訴訟を提起した(顕著な事実)。
2 本件における課税の根拠は,別紙5「課税の根拠」記載のとおりである(ただし,所得税の課税根拠のうち事業所得額について,当事者間に争いがある。
また,消費税等のうち,平成13年の返還等対価に係る税額並びに平成14年の控除対象仕入税額,中間納付税額及び中間納付譲渡割額については当事者間に争いがないが,その余の項目に記載された税額については,当事者間に争いがある。)。
3 争点
本件の主要な争点は,原告の事業所得に係る弁護士報酬の額を総収入金額に算入すべき時期である。
争点に関する当事者の摘示すべき主張は,後記第3「争点に対する判断」に記載するとおりであるが,その要旨は,次のとおりである。
所得税及び消費税等を通じて,まず,@着手金の収入計上時期について,被告は,委任契約時に着手金請求権が確定する旨主張するのに対し,原告は,着手金請求権は,人的役務の提供が完了されたときに収入として計上すべきである旨主張する。
また,A報酬金の収入計上時期について,被告は,弁護士が受任した事件の処理が終了し依頼者に報酬金を請求した時に報酬金請求権が確定する旨主張するのに対し,原告は,報酬金について具体的な合意がないことが多く,こうした場合には,弁護士と依頼者が事件の処理が終了した後改めて合意に達した時に収入として計上すべきである旨主張する。原告はさらに,着手金と報酬金を通じて,多重債務者の債務整理事件の場合には着手金ないし報酬金請求権を回収できない可能性が高いことから,そもそもこれらの金員が現実に支払われた段階で収入として計上すべきである旨主張する。
なお,以上のほか,後記第3の5(3)のとおり,個別の依頼者に係る着手金,報酬金等請求権の有無及び金額について,争いがあるものもある。
第3 争点に対する判断
1 収入金額の計上時期の基本的考え方についてまず,所得税及び消費税等を課税する上での収入金額の計上時期の基本的考え方について検討する。
(1) 弁護士報酬について,原告は,弁護士報酬のうち,着手金は着手時に,報酬金は事件が終了した後成功度合いに応じて,それぞれ一括して支払われるのが通常であったが,多重債務事件などにおいて分割払が励行されるようになったことなどから,契約締結時に着手金を受領し,事件終了後請求書を発行することにより報酬金が受領できるとは限らなくなったのみならず,こうした多重債務事件では,分割払の定めがあっても,実際に弁護士費用を回収することは困難になってきており,こうした事情の下では,弁護士報酬については,現金主義が適用される慣習があるというべきであり,また,そうでなくとも,所得税法36条1項の解釈において,@金額に対する具体的合意が成立し,A事件が解決し役務の提供が完了し,かつ,B法的手段に訴えて履行を求めることが法律上,社会通念上可能となった場合に初めて,弁護士報酬が「その年において収入すべき金額」に当たるというべきである旨主張する。
(2) しかしながら,所得税法は,一暦年を単位としてその期間ごとに課税所得を計算し,課税を行うこととしており,同法36条1項が,右期間中の総収入金額又は収入金額の計算について,「収入すべき金額による」と定め,「収入した金額による」としていないことからすると,同法は,現実の収入がなくても,その収入の原因たる権利が確定的に発生した場合には,その時点で所得の実現があったものとして,同権利発生の時期の属する年度の課税を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用しているものと解される。
これは,所得税が,経済的な利得を対象とするものであるから,究極的には実現された収支によってもたらされる所得について課税するのが基本原則であり,ただ,その課税に当たって常に現実収入の時まで課税できないとしたのでは,納税者の恣意を許し,課税の公平を期し難いので,徴税政策上の技術的見地から,収入すべき権利の確定したときをとらえて課税することとしたものであり(最高裁判所昭和49年3月8日第二小法廷判決民集28巻2号186頁参照),ここにいう収入の原因となる権利が確定する時期はそれぞれの権利の特質を考慮し決定されるべきものである(最高裁判所昭和53年2月24日第二小法廷判決民集32巻1号43頁)。
そして,弁護士報酬について,原告が上記(1)のとおり主張する内容をもってしては,上記の考え方を採らずに現金主義が適用されるべきであるとまではいえない。
原告の当該主張するところは,具体的な検討に当たって,上記の権利が確定する時期がいつになるかという問題において検討されるべきものである。
また,国税通則法15条2項7号は,消費税は,課税資産の譲渡等をした時に納税義務が成立する旨定めており,消費税法2条1項8号によれば,事業として対価を得て行われる役務の提供もここにいう課税資産の譲渡等に含まれるところ,この課税資産の譲渡等が行われた具体的な時期の判断についても,同様に,上記の考え方を踏まえ,課税資産の譲渡による対価や役務の提供による報酬を収受する権利が確定した時点で課税資産の譲渡等があったとすることを原則としつつ,取引の実態に応じて個別的に検討するのが相当である。
そこで,以下,弁護士報酬等につき,原告が依頼者から受領した金員の内容に応じて検討することとする。
2 着手金について
そこで,まず,これを着手金について検討する。
(1)ア被告は,上記着手金の収入計上時期について,以下のとおり主張する。
すなわち,所得税基本通達36−8は,人的役務の提供(請負を除く。)による収入が,その人的役務の提供を完了した日に生ずるものとする一方で,人的役務の提供による報酬を期間の経過又は役務の提供の程度等に応じて収入する特約又は慣習がある場合におけるその期間の経過又は役務の提供の程度等に対応する報酬については,その特約又は慣習によりその収入すべき事由が生じた日とする旨規定している。
本件で問題となっている前記第2の1(2)アの各申告当時における原告の所属するP1弁護士会の報酬規程によれば,着手金は事件等の依頼を受けたとき支払を受けるものとされており,原告も,依頼者との間で締結する民事事件又は刑事事件等の処理に関する委任契約(以下「受任契約」ともいう。)において,同旨の合意をしている。
こうした事情によれば,原告は,受任契約に基づき,受任契約締結時において,依頼者に対して当該委任契約において定められた着手金の全額を請求する権利を確定的に取得する。
イまた,被告は,着手金が人的役務の提供の過程において発生するものではなく,事件等の依頼を受けたときに支払を受ける性質の金員として支払われるものであるから,たとえ分割払特約が付されたとしても,それは単にその支払方法を定めたものにすぎず,委任契約締結時に既に権利が確定しているというべきであるとも主張する。
(2) 証拠(乙1,29)及び弁論の全趣旨によれば,弁護士報酬の種類としては,一般に,法律相談料,書面による鑑定料,着手金,報酬金,手数料,顧問料及び日当があること,このうち,着手金とは,事件又は法律事務(以下「事件等」という。)の性質上,委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて,その結果のいかんにかかわらず受任時に受けるべき委任事務処理の対価をいうこと,及び,着手金は,事件等の依頼を受けたときに支払を受けるものであることが認められる。
このように,着手金は,ほかの種類の弁護士報酬と異なり,事件等の結果のいかんにかかわらず,委任事務処理が開始される前に支払を受けるものであり,その金額も受任時に確定されることによれば,弁護士が依頼者から事件等を受任した時点で収入の原因となる権利が確定するとみるのが自然である。
(3) これに対し,原告は,着手金は,事件の受任時に依頼者から支払われるが,その性質は,委任事務処理の対価,すなわち,弁護士としての人的役務の提供の対価であるから,着手金請求権は,事件等の処理という人的役務の提供が完了するまで確定しないとして,着手金が現実に支払われた時点で,収入として計上する慣習があり,また,権利確定主義の解釈としても,着手金が現実に支払われた時点で収入として計上するべきである旨主張し,甲176,185にはこれにそう部分がある。
アそこでまず,原告のこの主張について検討すると,仮に原告主張のように,着手金は役務の提供があって初めて収入として計上されるとするならば,原告が受領した着手金について,役務の提供が既にあり,収入に計上される分と,役務の提供が未了で,収入に計上されない分に配分しなければならないはずであるが,本件全証拠によっても,このような会計処理が原告のみにとどまらず弁護士一般によって行われている形跡はうかがわれない。
また,前記のとおり原告が第一義的に主張するように,着手金について現金主義を採用するならば,着手金が受任契約締結時に一括して支払われたときには,その時点で役務の提供がないにもかかわらず,当該着手金を収入として計上することになり,着手金が人的役務が提供されるまで確定しないという原告の上記主張と相いれないことになってしまう。
原告本人の供述には,このような場合には,管理支配基準を採用することになるとする部分があるが,このように複数の基準を適用すべき合理的根拠を見いだすことはできない。
さらに,着手金が分割で支払われる場合には,予想される業務進捗状況に対応するように,分割払の日程及び方法を定めることも十分可能であると考えられるが,このような配慮が行われた形跡もうかがわれない。
このことに照らすと,着手金について分割払の定めがあったとしても,それは単に着手金の支払方法を定めたものにすぎず,受任時に支払われる金員であるという着手金の本質を変更するものではなく,着手金に係る権利の確定時期を左右するものではないというべきである。
こうした事情に照らすと,原告の主張にそうような慣習があるということはできないし,原告の主張のような扱いに合理性があるともいえない。
イなお,この点に関し,原告は,当時のP1弁護士会報酬規程(甲12,乙1)44条1項において,受任契約に基づく事件等の処理が,解任,辞任又は委任事務処理の継続不能により,中途で終了したときは,弁護士は,依頼者との協議の上,委任事務処理の程度に応じて,受領済みの弁護士報酬の全部若しくは一部を返還し,又は弁護士報酬の全部若しくは一部を請求する旨定められていることを指摘する。
しかしながら,受任後の事情により,着手金の全部又は一部について返還義務が生じたとしても,それは所得税法の規定に従い,別途処理すれば足りるものであるから,原告指摘の上記事実は,着手金を収入として計上する時期を左右するものでない。
また,証拠(甲11,16の1・2,17の1・2,20の1・2,28の1・2,79の1・2,117の1・2並びに甲14,15,18,19,21ないし27,29ないし39,42ないし49,51,53ないし58,60,62,64,65,67,68,70ないし78,80ないし85,87,88,90,92ないし95,97,103,104,106,107,110ないし116,118,122ないし124,126,130ないし133,135,136,138,140ないし142,144ないし146,149ないし151,153,154,156,157,159,163及び164のいずれも各枝番1)によれば,原告が依頼者との間で交わしていた契約書には,「既払いの着手金については,理由の如何を問わず,返還を求めることができない。」との定型文言が記載されていたことが認められる(なお,原告は,平成16年に自由化されるまでは,弁護士と依頼者との間で弁護士の報酬を勝手に決めることはできず,所属弁護士会の報酬規程に従うことが要請されており,上記定型文言がP1弁護士会報酬規程に反し無効である旨主張するが,依頼者と及び関係においては,弁護士報酬について同規程を離れて独自の合意をすることに何ら法的な制限はなく,原告が実際に上記契約書を使用して受任契約を締結し,それに当たって何ら留保していた形跡がうかがわれないことからすれば,この主張は,採用の限りではない。)。
のみならず,甲19の2及び140の2によれば,原告は,辞任した後に,依頼者との合意により着手金ないし概算実費の一部を返還したことがあることが認められるものの,甲14の2・3,18の2・3,21の2,70の2・3,140の3及び原告本人によれば,原告が中途で事件等に関する委任事務処理を終了した場合であっても,着手金の全部又は一部を返還しなかった例もあることが認められる。
これらのことによれば,必ずしも上記規程に従った扱いが慣習となっていたということはできないから上記報酬規程の定めの存在によっても前記(2)の判断を覆すに足りない。
ウさらに,原告は,多重債務者の債務整理の場合には,弁護士に一時金を支払う余裕がない者が多いため,事件終了時までに何回かの分割払を行わざるを得ないことが少なくなくなってきているが,こうした場合,弁護士が受任したことによって債権者からの圧力が一時的にせよなくなると,約束どおりに分割の着手金を支払わなくなる依頼者が少なくなく,分割金が約束どおりに支払われない事態がしばしば起こるが,これらの分割金の支払を求めて,弁護士が依頼者に対し法的手段をとるよう求めることは弁護士の公益的地位にかんがみ相当でなく,破産手続により免責が認められた場合には法的にも取り立ては不能となり,弁護士がこれを貸倒れ処理をすることも現実的には困難であるとして,債務整理事案等で着手金の支払が分割で行われる場合には,分割金が現実に支払われた時点で,収入として計上されるべきである旨主張し,甲10,180,184,185ないし187及び191ないし194,乙21並びに原告本人には,これにそう部分がある。そして,原告は,このような観点は,多重債務者などの貧困者に対する司法アクセスを確保するため,極めて重要なことであると位置づけて主張している。
しかしながら,着手金を任意に支払うかどうかは当該依頼者の個人的な属性によるところが大きく,多重債務者の債務整理の場合であっても,一概に着手金が任意に支払われないと言い切ることはできない。
のみならず,権利確定主義の下では一般に,一定額の金銭の支払を目的とする債権は,その現実の支払がされる以前に当該支払があったのと同様に課税されることとなり(換言すれば,権利確定主義の下において金銭債権の確定的発生の時期を基準として所得税を賦課徴収するのは,実質的には,いわば未必所得に対する租税の前納的性格を有するものである。),課税後に至りその債権が貸倒れ等によって回収不能となった場合には,所得税法52条2項などによって,これを是正することは,当然に想定されているものである。
また,取引先に対し支払の催告や請求等を行うことは,事業者の債権管理として当然に想定される内容であり,弁護士の活動が公益的な性格を有するとしても,一般の事業者と同様に債権管理を行うことは,その方法において相応の配慮があってしかるべきであるとはいえ,やむを得ないことに照らせば,多重債務整理事件で依頼者が着手金を任意に支払わない可能性がほかの受任事件に比べ一般的に高いと予想されるとしても,前記(2)の判断を左右するに足りない。なお,後記4(4)イのとおり,実際,原告は,免責決定後,依頼者に対し,未収着手金を請求し回収しているところであり,以上のように考えることが,本件の具体的事案を離れて,原告が主張するように,直ちに貧困者の司法アクセスを確保できなくするということに繋がるということもできない。
(4) 以上によれば,着手金請求権は,受任時において確定したというべきである。
したがって,着手金は,事件等の処理について委任契約が締結された日の属する年の収入に計上すべきものと解するのが相当である。
また,消費税についても,事件等の処理について委任契約が締結された日の属する期間に資産の譲渡等があったとみることができると解するのが相当である。
3 概算実費について
原告は,破産免責申立事件等において,受任時に概算実費の支払を受けているところ,原告本人及び弁論の全趣旨によれば,これは,通常の郵券,交通費,送料等に充てることが想定される金員で,事件終了後清算を予定されていないものであることが認められる。
原告は,これについても,着手金と同様に,現実の支払があった時点で収入として計上すべきである旨主張するが,同金員の支払が委任契約において合意され,かつ,事件終了後清算を予定されていないことにかんがみると,その内容は,委任契約において確定するというべきであるから,受任時に収入として計上し,また,同時点で資産の譲渡等があったと解するのが相当である。
4 報酬金について
(1) 被告は,報酬金について,原告が受任契約上,依頼者との間で,依頼者は事件が終了した時に,P1弁護士会報酬規程に基づいて原告が依頼者に請求する金額を報酬金として支払う旨の合意をしていることから,受任契約に基づき,当該事件の処理が終了した後,原告が同報酬規程に基づいて依頼者に報酬金を請求した時に,当該請求額の報酬金請求権を確定的に取得するというべきであり,権利確定主義に照らして,その金額は,当該請求の日の属する年分の収入金額に算入されるべきである旨主張する。
(2) そして,証拠(乙1,29)及び弁論の全趣旨によれば,弁護士の報酬のうち,報酬金は事件等の性質上,委任事務処理の結果に成功不成功があるものについて,その成功の程度に応じて受ける委任事務処理の対価をいい,事件等の処理が終了したときに,それぞれ支払を受けるものとされており,その額は,委任事務処理により確保した経済的利益の額をそれぞれ基準として算定することが原則とされていることが認められる。
このことによれば,報酬金請求権は,委任事務処理が終了し,原告が依頼者に対し報酬金を請求した時に,権利として確定するというべきである。
(3) 原告は,報酬金は,成功結果が得られない限り取得できない報酬であり,通常の場合,事件を着手する段階では確定しておらず,しかも,多くの場合には「P1弁護士会規程に基づく額」,「P1弁護士会の報酬規程に基づいて乙(弁護士)が甲に請求する金額」などの抽象的な定めしかなく,事件が終了したからといって直ちに金額が自動的に確定するものではないため,事件完結時において,弁護士と依頼者との間で,事件の難易,経済的利益,労力の程度,依頼者との関係等を踏まえ,成功結果の評価を巡り報酬内容を確定するための協議が必要であり(なお,弁護士から請求書を発信したというだけでは報酬金額に関する合意が成立したということはできない。),報酬金額に関する合意が成立しない限り,報酬金債権が確定したといえない旨主張する。
しかしながら,証拠(甲11ないし13,16の1・2,17の1・2,20の1・2,28の2,79の1・2並びに甲14,15,18,19,21,22,24,25,27,33,35ないし37,39ないし44,47ないし49,51,53ないし56,62ないし65,67,68,70,72ないし78,80ないし85,88,92ないし94,97,101,103,104,106,107,109,126ないし128,130ないし133,135ないし137,140,142,144ないし146,149及び150のいずれも各枝番1)によれば,平成13年から14年にかけての当時,各単位弁護士会において報酬規程を定め,その中で,報酬金の原則的な算定方法を定めており,原告と依頼者との契約で同規程を引用していたことが認められる。このことと,前記(1)のとおり,報酬金は委任事務処理の成功の程度に応じて,同事務処理により確保した経済的利益の額を基準として算定されるものであり,受任時にあらかじめ具体的な金額を定めることが性質上困難であることを併せ考慮すると,受任契約に報酬金額として具体的な金額を明示していなかったとしても,当事者間には報酬金額を上記算定方法に従って決められた相当額にする旨の合意があるというべきであり,したがって,報酬金請求権の内容は,委任事務処理が終了し,弁護士が依頼者に対し報酬金を請求した時点で確定されたものと考えられる。
さらに,@原告が依頼者との間で締結した委任契約において,委任事務処理終了後報酬金について改めて協議する旨の文言がなく,かえって,報酬金額をP1弁護士会報酬規程に基づいて原告が依頼者に請求する金額とすることを想定している定型文言が記載された契約書があること(前段落掲記の甲号各証。ただし,甲13,40の1,41の1,63の1,109の1及び137の1を除く。),A原告が,依頼者に送付した請求書に記載された金額が原告の希望にすぎず,この点について改めて合意する予定であることことを依頼者に説明した形跡がうかがわれないこと及びB原告が一部の報酬金を預り金債務と相殺する旨の意思表示をしているところ(甲33,49,56,90,93,100,101,126,145,147,150,159,乙10(いずれも枝番を含む。)など),これが,報酬金に関する依頼者との間の何らかの合意に基づくものであったと認めるに足りる証拠がないこと等の事情によれば,原告としても,当時,委任事務処理の終了後合意がなくとも報酬請求権が権利として確定したものとして取り扱っていたと推認できるのであるから,原告の上記主張は採用できない。
(4) また,原告は,多重債務者の整理事件の場合,弁護士は,成功報酬の分割収受を認めているが,法的手続が採られ,債権者からの追及を受けなくなると,弁護士報酬も支払わなくなる依頼者が少なくなく,分割金が約束どおりに支払われない事態がしばしば起こるが,これらの報酬金の支払を求めて,弁護士が依頼者に対し法的手段をとるよう求めることは弁護士の公益的地位にかんがみ相当でなく,弁護士がこれを貸倒れ処理をすることも現実的には困難であるとして,人的役務の提供が完了し,報酬金額の合意がされていたとしても,現実の回収がされるまでは,報酬金について,権利が確定したということはできない旨主張する。
そして,ここでも,原告は,このような観点は,多重債務者などの貧困者に対する司法アクセスを確保するため,極めて重要なことであると位置づけて主張している。
アしかしながら,まず,仮に依頼者の任意の弁済が見込めないことがあるとしても,前記1(2)のとおり,権利確定主義の下では一般に,一定額の金銭の支払を目的とする債権は,その現実の支払がされる以前に右支払があったのと同様に課税され,課税後に至りその債権が貸倒れ等によって回収不能となった場合には,別途対応することが予定されているのであるから,直ちに,現実の入金がないと権利が確定しないということはできない。
のみならず,前記2(3)ウと同様に,弁護士報酬金を任意に支払うかどうかは当該依頼者の個人的な属性によるところが大きいのであり,こうした依頼者の不確定な属性を基準として権利確定時期を決することは,恣意的な運用を招くおそれがあり,相当でない。
イ(ア) 次に,免責申立事件の委任契約について検討するに,免責申立事件においては免責決定が確定し,同手続が終了することによって,委任事務処理が終了し,報酬金請求権が発生すると考えられる。証拠(甲11,13,17の1・2,20の2,28の2,79の1・2並びに甲14,15,18,19,22,23,25ないし27,29,30,35ないし37,39ないし44,47,48,50,53,55ないし59,61ないし78,81,83ないし86,88,89,91,92,104,106,109ないし116,118ないし125,130ないし132,135ないし138,141,143,144,146,149,151,152,154,156ないし159,164のいずれも各枝番1)によれば,原告と依頼者との間で,免責申立事件が終了したとき,又は免責決定が得られたときに報酬金を支払うものとする旨合意しているものがあることが認められるところ,こうした合意も,上記検討でみたところと同趣旨のものと解される。
(イ) そして,証拠(甲104,106,109ないし116,118ないし125,132,138,146,149,151,152,154,156,159(いずれも枝番を含む。))によれば,原告は免責決定後,依頼者に対し,報酬金を請求していること(なお,甲122の3及び151の5では概算実費の未収分を,また,甲154の4では着手金の未収分を,それぞれ併せて請求している。),その際に,原告に対する報酬金債務についても免責された旨の説明がされた形跡がないこと,かえって,決定正本がないと免責の効力は生じないなどと記載した上で,原本正本類は全額入金後返却する旨通知していること(甲149の4,151の5,原告本人など)に照らすと,原告としても,当時,免責申立事件に係る報酬金請求権が,免責決定により回収不能となるとは扱っていなかったものと推認することができる。
(ウ) さらに,原告は,免責申立事件を受任した場合について,免責決定の効果によって,報酬金が法律的にも回収不能となる旨主張するものの,証拠(甲20,94,111,119,120,123,124,152,153,191)によれば,原告が本件で回収不能であると主張している報酬金請求権のうち,現実には回収されているものがあることが認められる。
なお,この点に関し,原告は甲111の2,119の2,120の2,123の2,124の2及び152の2は,入金管理のためのメモとして入力していたパソコンのデータであるが,必ずしもすべての入金が入力されているわけではなく,誤った入力が修正されていない部分もあり,信用性がない旨主張し,甲177及び191にはこれにそう部分がある。
しかしながら,上記データは,甲111の6(元帳)と一致する記載があり,また,入金日付が不定期であったり,入金額に変動があり,具体性に富むものである。
さらに,乙3によれば,原告が依頼者に発出した請求書は,このパソコンデータ及びそれを扱うプログラムを利用して作成されたことが認められる。
こうした事情にかんがみると,同パソコンデータは,誤記や不正確な点がある可能性を完全には否定できないものの,ほかにその信用性を否定する明確な証拠のない限り,信用性を認めることができる。そして,上記のものに関する限りは,各記載内容についても信用性を疑うべき具体的な事情はうかがわれない。
ウこうした事情によれば,原告の前記冒頭の主張は採用できず,以上のように考えることが,本件の具体的事案を離れて,原告が主張するように,直ちに貧困者の司法アクセスを確保できなくするということに繋がるということもできないのは,前記着手金の場合と同様である。
(5) 以上によれば,報酬金請求権は,委任事務処理が終了した時点(委任契約に,原告が請求した時とする特約がある場合には,請求があったとき)に権利が確定するというべきであるから,当該時点の属する年の収入に計上すべきものと解するのが相当である。
また,消費税に関しても,同時点の属する期間に資産等の譲渡があったと解するのが相当である。
5 以上を踏まえ,当事者に争いのある収入の有無又は金額について,収入の類型や依頼者ごとに検討することとする。
(1) 着手金及び概算実費
ア前記2及び3の検討によれば,着手金請求権及び概算実費請求権は,受任時に権利として確定したというべきであるから,各受任の日の属する年の収入として計上すべきである。
イこれに対し,原告は,別紙6(平成13年分)の番号2,12,17,19,25,41,44,61,67,73,75,76,78,94,98,101,111,114,116,119,123,130,138,141,151,152,155,167,174,185,191,207,237,238,242,243,261,262,264,269,別紙7(平成14年分)の番号15,16,25,29,34,39,41,47,48,53,54,68,72,73,77,95,96,109,110,118,126,132,151,156,164,177,178,195,200,202,203,219,222,224,235,238,240,284,288,292,293,295,307,327,330,340の各依頼者について,免責決定が当該年になされなかったことから,役務の提供が完了していないとして,各年に着手金報酬請求権の全額について,権利が確定したことを争うが,前記2のとおり,採用できない。
ウまた,原告は,別紙6の番号250(P2)及び別紙7の番号343(P3。ただし,着手金のうち11万5000円)の各依頼者について,着手金が回収不能であるとして,これらの着手金を各年の収入に計上すべきでない旨主張するが,前記2(3)ウのとおり,これらの着手金請求権は権利として確定しており,その後,仮に回収が困難になったとしても,このことは,着手金請求権の権利確定を左右しない(ちなみに,原告の主張によれば,原告は,平成18年に前者の着手金を全額回収し終わっている。)。
エ以下の依頼者との関係では,原告との委任契約が委任事務処理の途中で終了し,又は変更されたことが認められるので,個別に検討するが,いずれについても,以下に述べる各理由によって,前記アの判断を左右するものではない。
(ア) 別紙6の番号19(P4。甲18の3),114(P5。甲14の3),別紙7の番号340(P6。甲70の3)について
掲記の証拠によれば,原告は,上記各依頼者との間の委任契約を中途で解約していることが認められるが,原告が各依頼者に対し,着手金の全部又は一部を返還した形跡はうかがわれない。
(イ) 別紙6の番号67(P7,P8)について
甲17の4・5によれば,原告が平成13年3月7日付けで委任契約を締結したが,平成17年7月27日にこれを合意解除し,既受領の着手金について返還義務を負わない旨合意したことが認められる。
しかしながら,着手金請求権は,受任時にその権利が確定するのであるから,その後の課税期間において,減額の合意ないし受領した金員の一部返還があったとしても関係はない。なお,これらの依頼者については,着手金の一部しか支払われていないことが認められるが,同着手金請求権は受任時に確定したというべきであるから,このことは,着手金請求権の権利確定の事実を左右するものではない。
(ウ) 別紙6の番号101(P9),264(P10),別紙7の番号178(P11)について
甲19の1〜3によれば,原告がP9との間で,平成13年3月13日付けで委任契約を締結したが,平成15年4月2日にこれを合意解除し,着手金及び概算実費の半額を返還する旨合意したことが認められる。
また,甲140の1〜3によれば,原告がP10との間で,平成13年5月28日付で委任契約を締結したが,同年8月24日付けで辞任予告通知をし,その後,同人に対し9万9685円(振込手数料315円別)を送金したことが認められる(ただし,本件全証拠によっても,同送金が本件で問題となっている平成13年又は14年に行われた形跡はうかがわれないので,同送金分を平成13年又は平成14年の収入から控除することは相当でない。)。
さらに,甲73の1・3・5によれば,原告がP11との間で,平成14年11月6日付けで委任契約を締結したが,平成17年5月10日付けで,辞任通知を発出し,かつ,着手金10万円を返還したことが認められる。
しかしながら,着手金請求権は,受任時にその権利が確定するのであるから,その後の課税期間において,減額の合意ないし受領した金員の一部返還があったとしても関係はない。
(エ) 原別紙6の番号73(P12)について
原告は,着手金を減額する旨の合意があったと主張する。
a この点について,甲26の1〜4によれば,原告と,P12及び有限会社P13は,平成13年6月12日付けで,着手金を178万5000円,概算実費30万円とする約定で有限会社P13の破産事件と,P12の破産免責申立事件に関する委任契約を締結し,原告は,これに基づき,同日付けで,P12及び有限会社P13の債権者に対し,受任通知を発出し,平成15年8月4日,P12に対する免責決定がされたこと及び平成14年11月22日までに,上記着手金のうち合計116万5000円が支払われたことが認められる。
b 原告は,こうした事実関係の下で,平成14年5月29日,上記着手金が126万円に,また,上記概算実費が10万円に減額することが合意された旨主張し,原告の入金管理のメモであるパソコンデータである甲26の2には,これにそう部分がある。
しかしながら,証拠(甲20の3,71の2,133の2,145の2,155の3,160の2,乙2ないし4,10,11,15,17)によれば,同パソコンデータには,本件における処分後に,原告の主張する事実関係にそうよう加除訂正された部分があることが認められ,上記原告の主張にそう甲26の2の記載も同様に修正された可能性が否定できないので,これによって,原告の上記主張事実を認めるには足りず,ほかに原告の上記主張を認めるに足りる証拠はない。
(オ) 別紙7の番号307(P14)について
原告は,上記P14の着手金が当初21万円,概算実費5万円と合意されていたのが,平成15年4月10日,概算実費を2万円に減額する旨合意された旨主張するが,仮にこのような合意があったとしても,概算実費請求権は,受任時にその権利が確定するのであるから,その後に,減額の合意があったとしても関係はない。
オ別紙6の番号10(P15),51(P16)について
被告は,原告と上記各依頼者との間に委任契約が成立した旨主張し,甲135の1には被告の主張にそう記載がある。
しかしながら,証拠(甲133の1〜3,乙4)及び弁論の全趣旨によれば,P15と原告は,平成13年6月ころ,契約解除交渉事件の委任契約の締結について協議し,原告は委任契約書を作成し,着手金16万8000円及び概算実費1万円の入金予定がある旨アクセスデータに記入したが,P15は上記着手金及び概算実費を支払わず,契約書に署名しないままこれを原告に返送したことが認められ,これらの事実によれば,P15と原告との間に,委任契約が成立しなかったことが認められる。
そうすると,原告に上記着手金及び概算実費相当の入金があったということはできない。
また,甲135の1〜3によれば,P16と原告は,平成13年10月22日付けで,着手金を31万5000円(同年10月末日限り10万円,同年11月15日限り10万円,同月末日限り10万円,同年12月15日限り1万5000円を支払う。),概算実費5万円(同年12月15日限り支払う。)との約定で,P16の破産免責事件について委任契約を締結したが,着手金の支払がなかったことから,平成14年5月20日,原告がP16に対し,上記契約は不成立ということで処理する旨通知したことが認められる。
そうすると,原告に上記着手金及び概算実費相当の入金があったということはできない。
これらの事実によれば,これらの者に関する着手金請求権及び概算実費請求権はないとみるべきである。
(2) 報酬金
ア前記4のとおり,原告の報酬金請求権は,委任事務処理終了時に発生し,原告が依頼者に対し報酬金を請求した時にその権利が確定する。
イ原告は,別紙6の番号5,64,166,184及び別紙7の番号3,11,38,100,111,162,183,231,232,242,247ないし249,272,329の各依頼者については,報酬金について具体的な合意がなかったとして,報酬金を当該年の収入に計上することを争うが,前記4のとおり,報酬金請求権が権利として確定するために,委任事務処理の終了後に改めて報酬金について合意することは必要でないので,採用できない。
ウまた,原告は,別紙6の番号38,125,219,248及び別紙7の番号46,69,76,90,117,129,155,185,188,286,297,314,321,331,343の各依頼者について,報酬金が回収不能であるとして,これらの報酬金を請求した各年の収入に計上すべきでない旨主張する。
しかしながら,前記4のとおり,これらの報酬金請求権は権利として確定しており,その後,仮に回収が困難になったとしても,このことは,報酬金請求権の権利確定を左右しない。
(3) その他
ア別紙6の番号18(P17)について
被告は,原告がP17に係る地代供託の件について,平成13年6月22日,供託手数料3万2000円,交通費1万6950円及び消費税1600円合計5万0550円を,同年12月28日に,供託手数料3万2000円,交通費1万7150円及び消費税1600円の合計5万0750円を各請求したことから,平成13年には,上記依頼者に関し,合計10万1300円の収入がある旨主張する。
これに対し,原告は,上記交通費はいずれも委任事務処理費用として支出された実額であり,概算実費と異なり原告の収入とされるべきものではない旨主張し,また,平成13年6月22日の交通費が1万6950円とされたのは誤記であり,実際には1万6690円であった(過払い分260円は供託金手数料額3万3600円(消費税相当額を含む。)に加算して申告した。)旨主張する。
そこで検討するに,証拠(甲134の1〜6,乙11,30)によれば,原告は,いずれも「地代供託の件」について,平成13年6月22日,供託手数料3万2000円,交通費1万6950円及び消費税1600円合計5万0550円を請求したところ,同月26日,報酬(消費税相当額を含む。)として3万3600円,交通費として1万6690円,更に「売上実費収入繰」として扱われた260円合計5万0550円の支払を受けたこと,同年12月28日,供託手数料3万2000円,交通費1万7150円及び消費税1600円の合計5万0750円を各請求し,平成14年1月8日,報酬3万3600円(消費税相当額を含む。)及び交通費1万7150円の支払を受けたことが認められる。
そして,本件が地代供託に係る事務処理の委任であり,概算実費を受け取る必要性が必ずしも認められないこと,その名目が「概算実費」でなく,単に「交通費」とされていること,及び,その請求が委任事務処理後に行われていることによれば,上記「交通費」は交通費の実額の補てんを求めたものと解される。
そして,こうした交通費の実費は,委任事務処理費用として,委任者が負担すべきものであるので,これを受任者である原告の収入とみるべきではない。
そうすると,P17に係る原告の平成13年の収入は,3万3860円及び3万3600円の合計6万7460円であるというべきである。
イ別紙6の番号96(P18)及び97(P19)について
原告は,平成13年,P18について収入がなく,P19について47万円の収入があった旨主張し,乙5の1〜3(原告の元帳)にはこれにそう部分がある。
これに対し,被告は,P18について47万円の収入があり,P19については収入がない旨主張する。
そこで検討するに,甲136の1によれば,P19はP18を代理して,原告と委任契約を締結し,報酬を支払ったことが認められるので,被告の主張どおり,P18について47万円の収入があり,P19については,収入がなかったことが認められる。
ウ別紙6の番号232(P20協会P21)について
被告は,着手金17万8500円と概算実費2万円の約定があり,これに基づき,平成13年,原告に合計19万8500円の収入があった旨主張する。
これに対し,原告は,上記2万円は概算実費でなく,一般民事の預り金,すなわち実費の預り金であり,概算実費と異なり,原告の収入に当たらない旨主張する。
そこで検討するに,甲139の1〜3によれば,P21と原告は,平成13年8月8日,着手金17万8500円,「実費等」2万円の約定で,P21の不当利得返還請求事件について委任契約を締結し,同月31日,P20協会からこれらの金員相当額が支払われたことが認められるが,本件全証拠によっても,上記実費の内訳が明らかにされ,精算された形跡はうかがわれないので,上記2万円を実費の預り金とみることはできず,これは,原告の収入に当たるというべきである。
エ別紙7の番号20(P17)について
被告は,平成14年6月25日に手数料3万3600円及び交通費1万7150円(合計5万0750円)を請求し,また,平成15年1月9日,P17から5万0750円の入金を受けており,これは,原告が平成14年中にP17に対し請求したものであるから,原告の平成14年の収入に当たる旨主張する(合計10万1500円)。
これに対し,原告は,上記交通費はいずれも実費であり,原告の収入とされるべきではない旨主張するとともに,平成15年1月9日に入金された5万0750円は,同月6日に請求したものであり,平成14年中に同金員に関し,権利が確定していなかった旨主張する。
そこで検討するに,証拠(甲155の1・3,乙12)に加え,報酬金請求権は,委任事務処理終了時に発生し,原告が請求した時にその権利が確定することによれば,原告はP17から受任した地代の供託に関する事務について,交通費の実額を請求する扱いをしていたことが認められ,このことによれば,上記交通費も概算実費でなく,委任事務処理費用の実費であるというべきであるから,これを原告の収入ということはできない。
また,乙12によれば,原告は平成14年12月22日,P17の委任事務処理に関し,旅費交通費1万6890円を支出したことが認められ,また,同月25日,同人の預り金実費勘定から26万3520円の出金があったことが認められる。これによれば,原告は同月22日ないし25日ころ,P17から受任した地代供託の事務を行ったと推認される。
そして,甲155の3・4に原告が平成15年1月6日,P17に対し,報酬として3万2000円(消費税相当額別)を請求した旨の記載があること及び本件全証拠によっても,平成14年12月22日ないし25日ころから上記入金があった平成15年1月9日までの間に,原告がほかにP17のための業務を行った形跡がないことによれば,上記平成14年12月22日ないし25日ころに行われた業務に係る報酬金が確定したのは,平成15年1月6日であることが認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
そうすると,上記報酬金3万2000円(消費税相当額込みで3万3600円)についても,原告の平成14年の収入に計上することはできない。
したがって,原告の上記依頼者に係る平成14年の収入は,5万0750円(10万1500円−1万7150円−3万3600円)となる。
オ別紙7の番号33P22について
被告は,平成14年中の報酬が10万5000円あった旨主張し,原告は,同年中に支払のあった9万円に限り,収入があった旨主張する。
そこで検討するに,証拠(甲156の1〜4,乙26)によれば,P22と原告は,平成12年10月20日付けで,報酬金10万5000円を免責決定時に支払う約定で,P22の破産免責事件について委任契約を締結したこと,平成14年5月29日,P22に対する免責決定がされたこと,上記報酬のうち,1万5000円については,同年5月31日,P22からの預り金より充当する方法で弁済され,残額9万円については,同年7月から11月にかけて支払われたことが認められる。
これによれば,上記依頼者に係る原告の平成14年の収入は10万5000円となる。
カ別紙7の番号128(P23)及び129(P23)について
原告本人の陳述書(甲191)において,被告は番号128と番号129の受任事件を混同しており,番号128の収入額として被告が主張すべき金額は,24万円ではなく,21万1990円(着手金21万円と実費収入組入分1990円の合計額)であるとする部分がある。
証拠(甲153の1〜6,乙20,30(平成14年1月22日欄))によれば,原告は,平成13年5月9日,P23との間で,報酬金31万5000円の約定で,同人の民事再生申立事件を受任し,平成14年2月27日,同人に対する再生計画が認可されたこと,同受任契約によれば,報酬金は一括払いの約定であったが,P23は,これを平成14年5月から平成15年2月まで1か月3万円ずつ及び同年3月に1万5000円の分割で支払ったこと並びに平成14年1月22日,同人との間で,同人の建築請負契約に関する示談解決事件について,実費預り金として1万円,着手金として21万円の支払を受けたことが認められる。
これらのことに照らすと,番号128の欄に記載されるべき金額は,上記建築請負契約に関する示談解決事件に係る着手金21万円及び原告が自認する実費収入組入分1990円の合計21万1990円であるというべきである。
キ別紙7の番号230(P24)について
被告は,原告が平成14年7月5日,着手金として26万5000円を請求したとし,同額が平成14年の収入に当たる旨主張し,乙15にはこれにそう部分がある。
原告は,同金額は,本来25万円及びこれに対する消費税相当額の合計26万2500円の誤記であった旨主張する。
甲160の1によれば,原告の事務員は,P24との間で,平成14年7月5日,着手金を25万円及びこれに対する消費税相当額とすることを電話で確認した旨の記載があり,これによれば,上記依頼者に係る原告の平成14年の収入は,26万2500円であることが認められる。
乙15は,原告の入金管理のためのメモであり,その性質上誤記がある可能性が否定できないので,この認定を覆すに足りない。
ク別紙7の番号273(P25)に係る報酬金について
被告はこれが10万5000円であった旨主張するのに対し,原告はこれが9万円にとどまる旨主張する。
証拠(甲164の1〜4,乙27,30)によれば,P25と原告は,平成13年3月1日付けで,報酬金10万円を免責決定時に支払う約定で,P25の破産事件について委任契約を締結したこと,平成14年5月29日,P25に対する免責決定がされたこと,上記報酬のうち6万円が同年6月3日までに支払われ,4万5000円が,同月から同年10月にかけて分割で支払われたことが認められる。
これらによれば,P25に係る報酬金は10万5000円であることが認められる。
ケ別紙7の番号276(P26)について
被告は,原告が,P26に係る準強制わいせつ事件について,平成14年6月12日,同人に対し,手数料6万円を請求し,同年4月4日,着手金56万円を請求した旨主張する。
これに対し,原告は,上記手数料6万円は,別紙7の番号257の14万8000円に別途計上されており(合計12万円から1割を源泉徴収した額である10万8000円に通訳費用相当額4万円を加算した額),改めて収入として計上すべきではない旨主張する。
そこで検討するに,証拠(甲165の1〜4,乙16,30,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,上記事件は,当初私選弁護であったが,後にP20協会の法律扶助を求めるに至った事件であったこと,原告は,平成14年4月4日,着手金として56万円の支払を受けたこと,P20協会は同年5月30日,報酬金として12万円,通訳費用として4万円の支給決定をし,同年6月11日,原告に対し,14万8000円を支払ったこと及び原告が同月12日,このうち5万4000円を報酬金として計上し,同月13日,同事件における弁護を共同して受任したP27弁護士に9万4000円を送金したことが認められる。これらの事情に加え,P27弁護士への送金日に近接した時期にほかにP20協会からの入金がないことによれば,別紙7の番号257に記載された14万8000円は,上記支給決定によるものであることが推認され,これを覆すに足りる証拠はない。
したがって,上記報酬金6万円のうち,5万4000円は,別紙2の番号257に記載された金員に含まれるものというべきである(上記6万円の残額6000円は,源泉徴収された金額に相当するが,P20協会からの支払が原告に対するものであることからすると,上記源泉徴収も原告について行われたものであると推認され,これを覆すに足りる証拠はないから,上記6000円は原告の収入とみるほかない。)。
以上によれば,別紙7の番号276の項目で計上されるべき原告の収入は,6万円から上記5万4000円を控除した残額の6000円に,着手金として支払を受けた56万円の合計56万6000円ということになる。
コ別紙6の番号78(P28)に係る着手金及び概算実費について被告は,当初,上記着手金等を94万円と主張していたが,その後,これを99万2500円と訂正したので,この点につき検討する。
甲22の1によれば,原告とP28は,平成13年4月24日,P28及び株式会社P29の破産免責申立事件について,着手金を84万円,概算実費を10万円とする委任契約を締結したことが認められる。
また,証拠(甲22の2,乙25)及び弁論の全趣旨によれば,原告とP28は,平成13年中に,P28の母の任意整理事件について,着手金5万2500円の約定で委任契約を締結したことが認められる。
これらの事情によれば,原告の上記依頼者に係る平成13年の収入は,被告の上記訂正後の主張のとおり,99万2500円であることが認められる。
6 以上によれば,原告の事業所得における総収入金額は,平成13年においては別紙6のとおり,1億0695万1212円となり,平成14年においては,別紙7のとおり,1億0158万9613円となるから,これらの点に関する被告の主張は,これらの金額の限度で理由があり,その余については理由がない。
しかしながら,原告が納付すべき所得税額は,別紙8のとおり,平成13年には1117万3400円となり,平成14年には△159万3600円となる。
これは,本件各所得税更正処分(平成17年3月14日付けの裁決により一部取り消された後のもの。以下同じ。)による原告の所得税の納付すべき税額又は還付金の額に相当する所得税の額を,平成13年分(更正処分による納付すべき所得税額は1107万1300円),平成14年分(更正処分による納付すべき所得税額は△168万2000円)のいずれについても上回るから,本件各所得税更正処分はいずれも適法である。
同様に,原告の本件係争各年分の消費税等の額は,別紙8のとおり,平成13年課税期間については,240万0500円となり,平成14年課税期間については,23万0500円となり,いずれも本件各消費税等更正処分(平成17年3月14日付けの裁決により一部取り消された後のもの。以下同じ。)による原告の納付すべき消費税等の額を上回るから,本件各消費税等更正処分はいずれも適法である。
さらに,本件各賦課決定処分についても,国税通則法65条4項に規定する正当な理由があった旨の具体的な主張も立証もないことから,いずれも適法であるというべきである。
7 よって,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとし,訴訟費用の負担について,行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。
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事業の失敗など、借金を全額返済出来ない状況になったら債務整理をするしかありません。
債務整理とは多額の借金を負ったとき、多重債務に陥ったときに、債務者の再生させるいくつかの方法のことを言います。
最も有名な方法は自己破産です。
一般の方は自己破産のイメージのみあるため、債務整理に二の足を踏みがちです。
住宅ローン特則(「住宅資金貸付債権に関する特則」)という手続きを利用して個人再生をすればマイホームを失わずに借金を整理出来る場合があります。
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自己破産・個人再生以外にも任意整理・特定調停といった方法がありますので、個別に弁護士や司法書士に相談してみて下さい。
個人再生は持家を守れるなど、相談する弁護士によって人生が変わります。
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サイト売買とはIT資産であるWEBサイトを譲渡することでお金をもらうこと。
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